つまらん。
毎日毎日同じことの繰り返しである。
という愚痴を聞いてもらっていたら、渉さんが静かに言った。
渉「つまらんつまらんって、歩は自分で毎日を楽しくしようとしてんの?」
ぼく「うっ…」
渉「俺と話してる時だって、二言目にはつまらんつまらんってさ。
俺の気持ち考えてくれたことある?」
何も言えなかった。
同じことの繰り返しの毎日を選択しているのは自分だ。
変わるのを恐れているのは自分だ。
そして、自分との会話でさえ、つまらないと言われた渉が
どんな気持ちになるかも考えていなかった。
渉「…ちょっと触るよ」
突然囁く渉さん。
ぼく「い、いいけど触れるの…?」
渉「いいから。座って目を閉じて」
おいおいおいなんだそのウィスパーボイス。
何か危機を感じるぞ。
しかし、考えてみれば、声を掛けたり触ろうとしてみたりするのはいつも俺からだ。
タルパに触られるとどういう感覚になるのだろう。
髪に触れられた。気がする。
なんか若干手付きがエロい。
だんだん手が下がってくる。
耳元から頬を伝って首筋に差し掛かる。
待てなんだこの恋する乙女のような胸の高鳴りは。
落ち着こう。取りあえず落ち着こう俺。
やばい、なんだこれ、鼓動が半端ない。
ていうか近い。
渉さん息遣い近いよ!
ぼく「わ、渉さん、くすぐっ…!!?」
痛え!!?
なんかわからんけど痛え!!
痛い、いや、痛くはない、でも痛い。
なんだこの感覚。
こいつ、首に噛みつきやがった。
ぼく「き、吸血鬼かお前…」
渉「歩の真似」
俺は基本的に隠し事はしない。
邪魔をしてほしくないときは邪魔するなと言うが、部屋の出入りや風呂やトイレも基本的に隠してない。
まあさすがにトイレまではついてこないが、風呂に入ってるときにちょろっと話しかけてきたりのぞいてきたりすることは珍しくない。
だからって。
だからってそういうことについては空気読んでくれよ。
渉「仕方ないだろ。マスターの思考とか記憶とか少なからず共有してる部分があるんだから」
違うんだよ渉さん。
俺がそういう行動を取るのは所謂愛情表現であって
そもそも俺とお前じゃ根本的に何かが間違っている。
渉「でも俺は歩が好きだ」
だから違うんだよそういうことじゃなく、
いや間違ってはいないが、なにかこう、擦れ違ってるぞ。
そしてこのあと数十分かけて渉さんに根本的な間違いについて説明することになったのでした。
やはり俺は疲れているんだろうか。
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